欅並子の馬ウマ日記

競馬歴28年で、東京競馬場が主戦の競馬ライター、欅並子(けやきなみこ)がいろいろ書いてます。競馬予想、競馬文化にまつわるいろいろな出来事を、私目線でレポートします。競馬って、馬券を当てる以外にもいろいろ楽しいこと、ありますよね!(馬券も当てたいけどね)ほぼ毎日更新。

「トリガミ」という言葉を最近まで知らなかったことについての考察

こんにちは、欅並子です。

 

競馬をやっていると普通に聞く言葉「トリガミ」。

「馬券は的中したが、収支はマイナスになった」という状態を表す言葉ですね。

予想が絞りきれず沢山の点数を購入したレースで、買った中に当たりの組み合わせがあったとしても、配当が低くて払戻金が全体の購入額を下回ってしまった場合にこの言葉を使います。

テレビの競馬中継で普通にタレントさんたちもこの言葉を使っていますし、競馬関係のネット記事でも普通に見かける言葉です。

でも、実はわたし、最近までこの言葉を知りませんでした。

なんか不思議だなと思って調べてみたらいろんなことがわかりましたので、今日はそのお話をしたいと思います。

 

トリガミの語源と、使われるようになった時期について

「トリガミ」という言葉の語源や発祥についてネットで軽く調べてみましたが、「諸説ある」とばかり出てきて、あまりハッキリとはしていない感じです。

たとえば下記のサイトではこのように説明されています。

 

keiba-teacher.com

 

諸説あるものの、有力なのが「粋(すい)が身を食う」という「ことわざ」が元だと言うものです。

「粋が身を食う」とは、「遊郭や芸者さんの居るお座敷などの遊びに馴れた人は、粋(いき)な人だともてはやされるが、最後はのめり込みすぎて身を滅ぼす」という意味合いです。

そこから、損をすることを「ガミを食う」と言われるようになり、今では「トリガミ」に変化したと言われています。

ちなみに、トリガミは競艇や競輪、オートレースなどの公営競技でも使用される言葉です。

 

「粋が身を食う」ということわざが語源として挙げられています。

昔のいわゆる「飲む打つ買う」方面の遊び人の間で使われた言葉のようですね。

国語辞典などには載っていない、ある種のスラングのような言葉だと言えそうです。

別のところで1980年代頃から使われるようになっただとか、いやいや江戸時代からある言い方だとか、本当に諸説あるようです。

 

わたしが最初に競馬を見始めたのは1990年代の後半のこと。

その当時もテレビでは競馬関係の番組はチェックして視聴していたし、新聞・雑誌・書籍の類いにはたくさん触れてきました。ネットで出会った人々と会話をしたこともあります。でも、「トリガミ」って言葉には覚えがないんですよね。

この言葉を最初に聞いたのはおそらく、今からほんの4~5年前ぐらいのことだと思います。

気がつけば、テレビでも老若男女が「トリガミ、トリガミ」言っていました。

わたし自身も、結局のところ便利な言葉なので時々使ってしまいます。

でも、実はちょっとだけこの言葉を使うのには抵抗があるんです。

抵抗があるのは、やはりこの言葉には「飲む打つ買う」的な古くさい”男の遊び”イメージがつきまとっているのが原因ではないかと思います。つまり、あんまり上品な言葉じゃないよね?と。

実際のところどうかわかりませんが、昔は、一般の競馬ファンの仲間内の会話ではともかく、テレビでは「トリガミ」なんて言葉、使ってなかったんじゃないでしょうかね。

 

「トリガミ」という言葉を使わない人のこと

先日、グリーンチャンネルでやっていた番組を見て思ったこと。

内容は、青芝フックという往年のお笑い芸人の方が競馬場で1日を過ごすのに密着したドキュメンタリーで、その中で青芝フックさんがちょいちょい「トリガミ」をやるんですけど、青芝フックさん自身は、「トリガミ」という言葉を一切使わず「とって損」という言葉を使い続けていたんですね。

自分に「トッテソン君」とあだ名まで付けて自虐しちゃってましたが、なんだかとっても楽しそう。

「青芝フック」という名前を聞いてピンとくる方はあまり多くはないと思いますが、彼は、わたしが競馬を見始めた頃にKBS京都という関西ローカルのテレビ局でやっていた競馬中継の、日曜日のメインキャスターを務めていた人です。

言ってみれば、わたしにとっては競馬を覚え始めの頃の「競馬の先生」たちの中の一人と言っても良いような存在で、わたしは彼らからたくさん競馬の知識を得ました。

それこそ20年以上ぶりに青芝フックさんのお姿を見て、さすがに年齢を重ねて相当おじいちゃんになられてましたが、相変わらず明るく上品に競馬を楽しまれてる様子に心が和みました。

(ただし、2016年に放送された回の再放送なので、今現在どうされているのかは多少気になるところですが…)

そんな青芝フックさんの辞書に「トリガミ」という言葉がないのであれば、わたしが知らなかったのも無理はないなあと思ったのでした。

 

青芝フックさんの回に限らず、この番組面白いのでオススメです。

グリーンチャンネル見られる方は是非見てみてください。

 

www.greenchannel.jp

 

まとめと考察

で、トリガミに話を戻します。

わたしが最初に競馬を知った1990年代には馬券の種類が今より少なく、三連複も三連単もありませんでした。(三連複の発売開始が2002年、三連単は2004年からです。)

三連複や三連単が始まって、多くの人にトリガミの機会が増えたんじゃないかと思うんですよね。

馬連なんかだと、組み合わせの種類も単純なので、最初からトリガミになる組み合わせを避けるのも簡単ですが、三連系でフォーメーションだなんだとやってると、そこからトリガミにならないようにちょこちょこ操作したりとか、結構やってられない感じになりますよね。

高配当の組み合わせがくるのを祈りながら、バサッとまとまった点数を買う方式の買い方が一般的になったため、「当たっても安い→結果、損した」という目に遭う人が多くなり、その状況を端的に表す言葉が必要になったのでは、という説を思いつきました。

 

そんなことを考えながらさらにネットをさまよっていましたら、Yahoo!知恵袋で同じような実感を持っている人を見つけました。

最後にこちらを共有して「トリガミ」の話を終わりにしたいと思います。

 

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

この質問は2022年11月に書かれた比較的新しいものです。

質問者は競馬歴17年。自身より早く(おそらく1990年代に)競馬を始めた友人が「トリガミ」という言葉を知らず、自分が逆に意味を教えることになってしまったんだけど、なんで昔の競馬ファンは「トリガミ」を知らないんだろうね?というような内容が書かれています。

そう、まさにそれなのです。

20世紀に競馬を始めた競馬ファンは「トリガミ」を知らない説。あると思います。