こんにちは、欅並子です。
今日は、最近読んだ本を紹介します。
タイトルは「世界の中心で馬に賭ける」。
著者は、競馬評論家で競馬中継の解説・予想などでもおなじみの須田鷹雄さんです。
須田鷹雄さんはわたしより5つほど年上で、わたしが競馬を見始めた1990年代には既に現在も自称している「お笑い競馬ライター」という肩書きで執筆しておられ、当時たくさん発行されていた競馬関係の雑誌でも、お名前を見かけないことがないほど活躍されていました。
「お笑い」という通り読みながらついクスクスと笑ってしまうような面白い記事を書かれる方です。
この本は、そんな須田さんが書かれた「海外競馬放浪記」です。
わたしがこの本を手に取ったのは、先日、当ブログでサウジアラビアカップについて書こうとした時に、「そういえば自分は国際的な競馬の事情がまるでわかってないなあ」と実感し、ここは海外競馬について書かれた本でも読んで、ざっくりでもいいから体系的な知識が頭に入るといいなと思ったのがきっかけですが、結論から言うとこの本は「海外競馬についての体系的な知識」が書かれた本ではありません。
タイトルを見てもわかるので、まあ、そうかなーとは思ったのですが、この本は世界各地の競馬場に実際に足を運び、賭けたりご飯を食べたりして書かれたエッセイ集ですね。
そういう意味で自分が考えていた「勉強」とは違ったけれど、それは追ってまた別の本を探すとして、こちらはまた違った意味で「世界」がわかって見識が広がりました。
わたしが知っている競馬は日本の中央競馬と、せいぜい日本各地に点在する地方競馬までですが、世界には、もっといろんな種類の競馬があることがわかります。
人が馬の背に乗って走る以外の競馬もあれば、「サラブレッドかどうか」どころか、厳密には馬ですらない動物によって行われる”競馬(?)”もあり、それこそ「賭けられれば何でも良い」ぐらいの様相を呈している競馬場もあります。
どちらかというとタイトルは「世界の中心で」というよりは「世界の片隅で」という方が合っているかもしれないと思いました。
(まあ、元ネタが映画のタイトルだと思われるので、これでいいんでしょうけど)
これを読んでいると、日本の中央競馬ほどきちんと環境や仕組みが整備された競馬の方が珍しいし、貴重な環境なのかもしれないと思えてきます。
また、大きな潮流としては、「競馬」という文化自体が世界的には少し衰退傾向にあるのかもしれないと感じられる記述も目立ちました。
たしかに、賭け事という意味で言えば、競馬というのはなかなか効率が悪いところはありますよね。ただ賭け事をしたいなら「サイコロ振って丁か半か」だって成立するわけで、なにもあんな広大な土地を使ってたくさんの人手をかけて繁殖や育成なんて膨大な時間をかけながらやるようなコトではないのかもしれません。
それでも、世界の至る所に競馬はあって、規模の大小問わずそこにいる人たちの楽しみとなり文化として細々と続いているのは、ただの賭け事で済まない価値がそこにあるからだとも思います。
競馬について深く考えるようになって最近気がついたことの一つに、「わたしは賭け事自体はあまり好きではない」という、ある意味致命的な問題点があるのですが、それでもわたしは競馬が大好きです。
賭け事が好きではないわたしが「競馬好き」という矛盾と、ただ賭けたいだけなら競馬じゃなくてもいいのに世界中で何故か競馬が続いているという矛盾は、根っこの所はもしかしたら繋がっているかもしれません。
その魅力と原動力については、わたし自身もこれからの研究テーマとして突き詰めて考えていけるといいなと思いました。
ま、あくまでも「楽しく」ですけど。当ブログは多分、そういうブログになっていくと思います。
というわけで、ひとりの競馬好きとして、日本の競馬がきちんとしたシステムのもと、開催に多くの人が集まって盛り上がれるように整備されていることには、もっと感謝した方がいいのかもしれないなとも思いました。
もちろん、日本の競馬だっていろいろな矛盾を抱えながら沢山の問題点に目をつぶりながらなんとかやっている面があるのも知っていますが、それでも「毎週楽しい競馬をありがとう。がんばれ、日本の競馬!」って気持ちになりました。
この本は2022年4月発行の新しい本で、しかも書き下ろしです。
競馬場への訪問時期はずいぶん前から最近のものまで様々ですが、コロナ禍を経た「今」の視点で競馬場の現状や著者の思いが綴られているのがまた良いです。
おすすめの1冊です。
この本の前に、同じ著者が日本国内に100以上あるという公営競馬場を巡って書いた「いい日、旅打ち」という本が出ているそうなので、次はこちらも読んでみたいと思っています。