こんにちは、欅並子です。
わたしは競馬好きであると同時に読書好きでもあるので、競馬について書かれた本も積極的に読んでいきたいと思っています。
今回ご紹介するのはこちら。
前に当ブログでご紹介した「風の向こうへ駆け抜けろ」は女性の作者による女性騎手の物語でしたが、こちらは、男性の作者による男性騎手の物語。
この小説は、主人公の父が騎手としてレースに騎乗中に落馬事故で亡くなるところから始まります。数年後、自らも騎手になった主人公は、競馬サークルに身を置いて騎手としての腕を磨きながら、父の最期に関わった人々に近づいて死の真相を探ろうとするのですが……。と、いうお話。
誰のせいで父は亡くなったのか?というか、誰が父を殺したのか?ということを常に考えながら、騎手としても精進する主人公、なかなかストイックです。
主人公なりに「父は、この人に陥れられたのでは?」って目星を付けた人がいて、その人は非常に優秀な先輩騎手。父にとっても先輩だったので、大先輩ですね。
その先輩騎手は気難しくとっつきにくく、なかなか本心に触れることができない存在として描かれるため、主人公の中の疑念も限りなく大きく膨らむのですが、一方で、真相を追いかけることは、同時にその優秀な大先輩の背中を追いかけることでもありました。
主人公は騎手として成長する中で、その先輩の騎手としての凄さも身をもって知ります。
尊敬の念と疑念との板挟みに苦しむ主人公。果たして本当にその先輩騎手が犯人なのか?
……と、まあ、そんなお話です。面白そうでしょ?
わたしもついつい引き込まれて、ちょっと夜更かしして読み進めてしまいました。
ネタバレはしませんが、結末は爽やかに描かれるものの、よく考えると最悪の答えじゃない?って思ってしまったり。
主人公は前向きっぽかったので、まあいいのかな?って感じです。自分だったらどうかな?とか考えてしまいました。
作者の本城雅人氏は、「サンケイスポーツ」の記者としてプロ野球、競馬、メジャーリーグ取材などに携わった方でもあります。
この小説はもともと競馬雑誌の週刊Gallopに連載された作品だそうで、読者が競馬ファンであることが前提で書かれた小説です。だからなのか、少々専門的な話が出てきても「競馬の世界では、こういうことがあるんですよー」みたいな説明的な描写が挟まれることもなく物語に集中できました。
元スポーツ新聞の記者の方が書いているのだから、競馬サークルの人間関係は、きっとかなりリアルに表現されているのだろうなと思います。
毎週毎週たくさんのレースが行われているけれど、実際のとこ、どの騎手がどの馬に乗るのかってどうやって決めてるんだろう?っていつも不思議に思っていたので、その辺りの事情がとてもよくわかりました。
こちらのブログの記事でも最近「予想するときにはちゃんと騎手も確認しなきゃね」なんてことを書いてましたが、これは完全に、本の影響を受けて書きました。
残念な点としては、ジョッキー目線で書かれた小説なので、馬の描写が少ないのは、馬好きとしては少し寂しく感じました。
あと、中に出てくるスポーツ新聞の新人女性記者が、今だったらちょっとセクハラって言われるかなあという扱いをされていたり……っていうか、そもそも女性が非常に子どもっぽい性格に描かれていて、そのキャラ作りの目線そのものがちょっと昔の「女って」っていうステレオタイプなんじゃないかと感じたりもしました。
あとは若手騎手が披露する宴会芸がサブちゃんの演歌の替え歌だったり、やや古くさい感じがするところもあります。
この本が発行された時期が2017年ですからそれほど昔ではないと思いますが、それでも、コロナ禍前後でだいぶ世の中変わったと思うので、その辺りの違和感かなあとも思いました。
この作者はほかにもたくさん競馬を題材にした小説を書かれているようです。
生産牧場の話もあるみたいですね。それだったらもう少し馬も出てくるかしら?
また読んでみたいと思います。
今週のお題「最近おもしろかった本」