欅並子の馬ウマ日記

競馬歴28年で、東京競馬場が主戦の競馬ライター、欅並子(けやきなみこ)がいろいろ書いてます。競馬予想、競馬文化にまつわるいろいろな出来事を、私目線でレポートします。競馬って、馬券を当てる以外にもいろいろ楽しいこと、ありますよね!(馬券も当てたいけどね)ほぼ毎日更新。

サラブレッドに「心」はあるか という本を読みました

こんにちは、欅並子です。

 

最近面白い本を読んだので、今日はその本を紹介したいと思います。

 

サラブレッドに「心」はあるか (中公新書ラクレ) Kindle版

 

筆者の楠瀬良氏は農学博士・獣医師であり、JRA競走馬総合研究所で馬の心理学、行動学を研究し、運動科学研究室長、生命科学研究室長、企画調整室長などを歴任した方で、おそらく日本一の馬博士です。

この本の中には、実際の競走馬を使った実験や観察を踏まえた記述がたくさん出てきますが、このような立場の人にしかできない貴重な研究ばかりだと思います。

そんな偉い立場の人ですが、競馬ファンの気持ちにも大変理解が深いので、馬への専門知識が一切ない人でも興味を持って読める内容になっています。

 

競馬ファン向けに書かれた本なので、「馬の気持ちがわかるようになれば馬券ももっと当たるようになるかも?」と期待する人への気配りもありますが、ご想像の通り、これを読んでも馬券が当たるようにはならなさそうです。

ただ、これから競馬場で馬を見る時には、少しだけ、馬そのものや馬の周りの人たちの動きの背景にある意味がわかるようになると思うので、そういう意味で、視野が広がって、より競馬が楽しくなる本だということは言えると思います。

 

わたしが競馬を好きな理由の第1位は、「馬を見るのが好きだから」ですが、わたしはもともと取り立てて動物好きというわけではありません。

犬や猫など、人の家で飼われているペットでも、そばに寄ってこられるとどうして良いかわからなくて固まってしまうぐらい、どちらかというと動物は苦手です。

そんなわたしが、馬を見ていて全く不安な気持ちにならないのは、人が馬を扱う方法が、扱う人の間でちゃんと共有され、馬はその管理の下で完全にコントロールされた存在だということがわかるからだと思います。

その上で、馬それぞれの好き嫌いとか変なクセとか、どうしようもなく出てくる個性みたいなものが滲み出して来る感じが好きです。

 

わたしは、人の言うことを聞いて人の役に立ちたいな、周りの迷惑にならないようにしたいな、っていう「ちゃんとしなきゃ」をすごく意識しながら生きてる方なんですが、

やっぱり自分のどうしようもない性分みたいなものは隠しきれなくて、時々失敗をしたり周りに迷惑をかけたりして落ち込むことがよくあります。

そんなとき、馬を見ていると、「あの子たちもがんばってるもんな、わたしもがんばらなきゃ」って励まされるような感じがするのです。

 

人と馬を重ねるなんて無茶だなって思いますか?

でもね、結局「人が考えたシステムに合わせて生きる」ということを選択しているという意味で、馬と人には共通点があると思うんですよね。

人間が馬に乗っていた痕跡は、紀元前4000年ぐらいの遺跡からも見つかるそうで、6000年にも及ぶ関係の中で、人間は馬を利用することで繁栄してきましたが、馬という種もまた人間に従うことで繁栄してきたということです。

 

表題の、サラブレッドに「心」はあるか、ですが、サラブレッドにはサラブレッドなりの「心」があります、という答えになると思います。

褒められると嬉しいし、勝つのも嬉しい、だけど恐いことや苦しいことは嫌い。

やっぱり人間の「心」とも似ていますね。

大きくて力は強いけれど、ちょっとビビりでズルいところもある馬たちのことを、もっと愛おしく思えるようになりました。

 

しばらく夏競馬で馬たちともご無沙汰です、早く競馬場で会いたいなと思いました。