欅並子の馬ウマ日記

競馬歴28年で、東京競馬場が主戦の競馬ライター、欅並子(けやきなみこ)がいろいろ書いてます。競馬予想、競馬文化にまつわるいろいろな出来事を、私目線でレポートします。競馬って、馬券を当てる以外にもいろいろ楽しいこと、ありますよね!(馬券も当てたいけどね)ほぼ毎日更新。

横断幕 コロナ禍で失われた風景

こんにちは、欅並子です。

 

最近、競馬の古い映像や写真をじっくり見るようになって思い出したのですが、コロナ禍以前には、パドックにはいつも、色とりどりの横断幕が掲示されていましたよね。

馬を応援するものはもちろんのこと、騎手や調教師、生産牧場から馬主さんまで、いろんなタイプのものがありました。

時にはキャッチフレーズが面白いものもあって、見ているだけで楽しいものでした。

しかし、現在はJRAのすべての競馬場で横断幕の掲示受付は中止になっており、もはや、持ち込みルールについての記載をJRAの公式サイト上で見ることすらできません。

(ちなみに、一般的に「横断幕」と呼ばれていますが、JRAでは「応援幕」という言葉が使われていたようです)

 

横断幕は、ファンが自分で作ったものを競馬場に持ち込んで、自分で取り付けます。

掲示するには許可証が必要で、事前に受付窓口へ横断幕を持ち込んで係の人のチェックを受けます。

たしか、サイズは縦1m×横3m以内で、企業や商品名を入れて広告をしてはいけないとか、誹謗中傷する内容は不可など、書いてある中身についても基準があります。

あとは、風が吹いてもなびいたりしない、しっかりと柵に結びつけられる構造になっているかとか、立体的に飛び出していたりピカピカ光ったりする素材が使われていないか、などなど、馬をびっくりさせないための基準もあり、それらをクリアしているものだけに、競馬場名の入った許可証のシールを貼ってもらえます。

また、取付作業をして良いのは、パドックに馬がいない時だけです。

ひとりでモタモタ作業をしていると、パドックに立っていた警備員さんが内側から作業を手伝ってくれたりしてました。

 

そう、わたしも横断幕をパドックに出したことがあるのです。

応援していたのはビワハイジという馬です。

ビワハイジを応援していた経緯やその頃の思い出は、今度また改めて「わたしが大好きだった馬」シリーズで詳しく書きますが。

 

ビワハイジは、真っ黒な馬体に赤いメンコがトレードマークの牝馬でした。

わたしは、その赤いメンコをモチーフにした横断幕を手作りしました。

規定サイズギリギリの大きな赤い布を用意し、両サイドに縦長の楕円の穴を開けました。そして、その穴の後ろから黒い布を当てて縫い付ける。

つまり、メンコを付けた顔を正面から見たイメージですね。

そして、その両サイドの穴と穴の間に、馬名とキャッチフレーズを書いた文字書くのですが、ペイントするのではなく、フェルトを文字の形に切り抜いたものを、アップリケの要領でひとつひとつ縫い付けたのでした。

 

当時の写真が残っていないのが残念ですが、デザイン画だけは残っていました。

 

 

文字はプリンターで拡大印刷して型紙にし、それを元にフェルトを切り抜いて、チクチクと手で縫い付けるのです。

いやー、もうこれがホントに大変で。

 

しかも、ビワハイジが引退するまでにこの横断幕を掲示できたのは、わたしの記憶ではたったの2回だけでした。

それでも、この横断幕は結構よく目立っていたようで、とある競馬雑誌のビワハイジ特集記事の中で、担当厩務員さんが「あかいメンコがお気に入り」というキャッチフレーズに触れてくれたりして、とても良い思い出にはなっています。

 

横断幕といえば馬の名前のものに目が行きがちですが、実際にたくさん掲示されているのは、騎手や厩舎を応援するものの方だったりします。

というのも、やはり特定のただ1頭の馬を応援する横断幕は、掲示できる機会がものすごく限られてしまうんですよね。

横断幕を作りたいと思うほどまでに愛情が高まった頃には、実はその馬は現役生活の終盤だった、なんてこともよくある話。

さっきも書いたように、ビワハイジなんて、横断幕が完成した頃には残り2走でしたからね。

それでも、出走の機会が残っていればまだ良い方で、運が悪ければ横断幕を作ってる間に引退、なんて可能性だって普通にあります。

その点、活躍している騎手や厩舎であれば、ほぼ間違いなく毎週のように出場していますし、活躍期間も長いので、一度作れば何度も使いまわせて効率が良いですね。

種牡馬の名前で「○○の子どもたち」という横断幕を見かけたことがありますが、これも、掲出機会が多く得られるという意味で、とても良い発想だと思います。

 

「効率」なんてちょっぴり世知辛い言葉を使いましたが、そのようなことを考えてしまいました。

とはいえ、ここ数年は横断幕が一切掲示できない期間が続いています。

パドックの柵には、横断幕の代わりにゴージャスな装飾やフラワーアレンジメントが飾られるようになり、それはそれで統一感があってオシャレだよね、と思わなくもないですが。

横断幕が戻ってくることを楽しみにしている人もたくさんいることでしょう。

わたしも、あの頃が少し懐かしいです。